07/10
Mon
2006
≪登校編≫
グッドチョイスな授業計画で週の授業をほとんど午後に集めている俺にとって、唯一午前、しかも一時間目がある木曜日はかなり気の重い曜日なのである。
しかしその日に限り俺は自分が木曜の一時間目を取っていたことを幸いに感じた。
大学最寄の駅に到着し、歩道橋を渡りきったところで、思わぬ人物と出くわした。
俺の大学生活の中、数少ない(本当に数少ない)女の友達である河織さんがそこにいたのだ。
なんたる偶然、アンビリーバボー!! このときばかりは俺も神に感謝したね。うちは仏教なのにいいのかって? 気にすんな、今日だけは神仏習合さ。これを機会にお近づきになるしかない、なれねば嘘だ、と朝のあいさつを交わして学校への道のりをともに歩み始めて。
ハッキリと明示しよう。
5歩だった。
俺の幸せ時間は、およそ数秒。歩数にして5歩の時間だった。
5歩歩いたところでそいつは俺の後ろから現れた。
「よう停識―。おっはよう」
俺の後ろ頭を叩きながら、
朝っぱらからさわやかな、
さわやかなスマイルとともに声をかけてきた。
――――死んだ。いや、死にはすまいがこのベタな少年漫画の1シーンのようなお約束の展開に、間違いなく俺の気分はこのとき六大地獄を一周してまた帰ってきたぐらいのショックを受けていた。
「あれー停識その人誰―? 友達かー? おはようございます俺停識の友達の塩識ですー」
なんとこいつは無礼にもいきなり河織さんに話しかけるどころか自己紹介までしやがったではないか。
これがサッカーでオレが審判なら即赤紙ものなのだが、ただの登校風景というわけだからそうもいかない。
しかたなく三人で学校までおよそ10分の道のりを歩くことになった。
道中俺は塩識に何度も
『ばかやろー。俺の気持ちを察しろ!! そして今すぐ急用を思い出して駅へ逆戻りするか、モンテグネロ病でも発病させて吐血してその場にうずくまるか、突然走りたい衝動に駆られるかしてさきに学校へ行くかしやがれコノヤロー!!』
と今まさに目覚めんとしている俺のテレパシーを送るのだが、なんら気づく気配もなく楽しそうに話をしてやがる。
この野郎話題に入ってくるどころか、話題を率先し、いつのまにか俺が話題からはぶられているではないか。
ここここここ、こ~のど畜生め!!
しかもこの狭い道でお前が河織さんの隣を歩いたら俺は必然的に二人の背中を見る羽目になって、さらに話題から話されていくではないか。こいつもしかしてわざとか!? いやわざととしか思えないっ!
島流しの刑だ!
だれか高瀬舟持ってこい。俺が全責任を追ってやるから。むしろ人識君を呼んできなさい。
「おい停識―。俺こっちだから、じゃーなー」
俺の不のオーラによる電波攻撃がやっと通じたのか、塩識は手を振りながら俺から去っていた。
行ってしまえ
そして逝ってしまえ馬鹿者め。
よし、これで心置きなく河織さんとお話ができるぜ。
「じゃあ停識さん。私はこっちだから」
「え? ああ、うん。ばいばい」
ばいばい?
さようなら?
なんか返事しちゃったけどこれどういうこと?
ここはどこ? 校門? あれ、れ~……
…………がっくし
そんな感じで、俺は最悪の気分で木曜日を過ごし始めたのだった。
戦績・敗北
総合戦績 0勝2敗
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